2017年5月20日土曜日

生まれる命、出ていく命。牧場のHello&Goodbyeな日々。

 
 
5月もまもなく終盤にさしかかりますね。
ここ数日は天気もよく、暑いくらいです!
 
 
 
 
緑と牛さんのコラボは写真映えもするし、
牛たちの関係性や個性が面白くって
時間があれば(なくても…)ついつい放牧場をのぞきたくなります。
 
 



昨年までよりそもそも数が多いのもありますが、
純正に近いブラウンスイスイやガンジーが増えてきたこと、
ちびっ子牛もたくさん放牧場に出ていることもあって、
今年は特にカラフル。




 

なんとなく、牛たちのグループとか力関係とか、
性格が見えてくるのもまた面白いのです!



 
 

 
そして牧場に暮らすこのかわいい牛さんたち、
実はこまめにメンバーチェンジが行われています。

まずは5/18の朝にやってきた新メンバーが2名。
この方と、↓
 
 
 
 
この方。↓
 
 
 
 
 
なんとこの子たちは双子でした!
朝の内にお母さん牛ひとりでお産をしていたようです。
安産でなにより~。
 
 
 
 
 
 
で紹介したことがありますが、
1頭が女の子でももう1頭が男の子だったら、
女の子の牛ちゃんも生殖機能がないと判断されるので
そのまま酪農家で飼育することはありません。
 
 
 
でも、この子たちはありがたいことに女の子の双子でした。
 
 
そしてお母さんは、井上牧場で第1世代のガンジー種。
2009年生まれのもうすぐ8歳で、
今回で7頭の子どもを出産したことになる結構な年長さん。
 
 
 

つまりいま現在井上牧場にいる「ガンジー」の牛ちゃんたちは、
元をたどればみんなこのおばあちゃんガンジーの娘か孫。
 
 
 
 
 

いま、4月に生まれていた別のガンジーちゃんも一緒に、
3頭でハッチを並べています。


新たなアイドル誕生の予感です^^!
 
 
ところで酪農家では、
お母さん牛たちから牛乳を頂くため、
お母さん牛が、お母さん牛でい続けてもらうため、
概ね1年に1回出産してもらうように人工授精を繰り返しています。





いま、井上牧場では80頭近い経産牛、
つまりお母さん牛、
つまり牛乳を出してくれる牛さんが暮らしています。
つまり、普通~に牧場を運営していこうとすると、
経産牛さんたちからだけでも、
1年に80頭くらいの仔牛が産まれるということです。

 
 
 
それに加えて、
「まだお母さん牛になっていない」女の子牛たちも多数暮らしています。

(だってお母さん牛たちから「毎年」80頭くらい仔牛ちゃんが産まれてくるってわけですから!)
 
 
初産待ちの2歳くらいの子だって、
10~20頭くらいいるんじゃないかしら。
というわけで、
1年の間に井上牧場で生まれてくる仔牛ちゃんは、
100頭近くになるかもしれません。
 
 
 
 
 
生まれてくる仔牛は確率でいえばだいたい半分が男の子。
以前からお伝えしておりますとおり、
一般的には酪農の牧場で生まれた男の子は肉牛牧場へと売られていきます。



井上牧場の場合は男の子も数頭はそのまま飼育して、
井上牧場から「屠畜場」へ送っています。




ただ、牧場のキャパシティの都合で、
全員の男子を置いておくことはできないので、
やっぱり仔牛の内に手放す男の子も多いです。



先日生まれたこいつも、↓



4月に生まれたこいつも。↓





まさしくドナドナで、
トラックに乗っていってしまいました~。



ちなみに「1645」の方は、前回5/9の記事内
出産待ちブースに逃げ込んで連れ戻されたあいつ。


印象的な思い出がある仔牛ちゃんだったりすると、
余計に手放すのがさみしくなってしまいますよね~。




母さとみさんはトラックに乗るこいつらを見送りながら、
「引き取り先でかわいがってもらえたらいい」
と、
言っておりました~。






それから、サンクスビーフとしてお肉になってもらうため、
しばらく井上牧場で暮らしていたオス牛くんも、
先日ここを出発しています。

いつの間に、耳の番号をなくしてしまったこの方です。



 
 
 
来週にはこいつのお肉を迎えにいく予定です。
というわけで次回のサンクスビーフはこの方のお肉!
こいつの紹介はまた改めて^^
 
 
 
男の子の運命は、
井上牧場の場合上記のいずれか。
じゃあ、女の子の仔牛ちゃんだったら全員井上牧場で
お母さんデビューするのかというと、
そうもいきません。
 
 
男の子が全員はここで暮らせないように、
女の子も全員暮らせる場所と飼料を用意できないからです。
 
 
 
女の子でも何頭かは、
仔牛の内にここを出ていきます。
4月に生まれた彼女は、先週別の酪農家さんへ。
 
 
 
あるいは、性別に関わらず生まれた時点、
もっと言えば人工授精の時点でお肉になることが決まっている仔牛ちゃんもいます。
 
 
「乳用種」のお父さんの種ではなく、
「肉用種」である黒毛和牛の種をつけて生まれた子牛ちゃんのことです。
たとえばこの子がそうです↓。




この仔牛ちゃんは女の子ですが、お父さんが黒毛和牛。
この業界で「F1」と言うと、ホルスタインと黒毛和牛の交雑種のことでして、
性別に関わらず生後2週間ほどで売りに出すことになります。
 
 
そもそも乳牛の数が足りているとか、
肉牛になる仔牛として販売して収入を得るという意味で、
生まれてもらったりすることがありますよ~。

 
 
 
あるいは、
年齢を重ねたり、
体が弱かったり、
お乳の量や質が悪いと判断されるなどで、
「淘汰」されるお母さん牛もいます。
 
 

一番最近でいえば、
「1285」の彼女は4月にここを出ていきました。

 
 

 
 
ここを出ていった後に向かうのは屠畜場です。
今頃はお肉となって、誰かの口に入ったりしているかもしれません。
 
 
 
そんな風にして、
牛さんの数が多すぎることのないように、
「調節」することも少なくないのです。
 
 
 

牛たちには本当に感謝とリスペクトの気持ちでいっぱいです。

お母さん牛からお乳を頂き、
お乳が出ない牛さんでもお肉を頂きます。
あるいは毛や皮を頂けば、
服や鞄など実用的な道具に加工することもできるでしょう。
それらが、お金という形で利益をもたらしてくれます。


 
 
例えば私なんかは、
食べて寝てダラダラして…
生きてるだけじゃ何の価値も生み出せません。



だけども牛たちは、
生きてるだけで、
好きなときに好きなだけ食べて寝て暮らしているだけで、
ものスゴイ価値をもたらしてくれてます。
「牛スゲー!頭あがらねー!」
と、しょっちゅう思うわけです。
 


 
 
ビートルズの「ハローグッバイ」の歌詞も知らなければ
意味については何も考えたことがなかったけれど、
なんだかふと
「牧場生活ってハローとグッバイの繰り返しだなー」と
思いついた次第。
 
 
 
※こいつ↓も5/19の朝に生まれたハローなニューフェイス!
女児かな?男児かな?
ここに残るのかな?出ていくのかな??
 
 
 
そしてまた
このニューフェイスたちとのハローを愛しく思うほど、
いずれくるグッバイが重たくなってしまうのでしょうね~。



そしてそんな繰り返しと向き合い続けることが、
今の生活を続けたい誰かの代わりに
牧場が担っていることの1つなのですよ~。