2018年12月21日金曜日

2018年はもうおしまい!来年はもっと、悲しいお別れが少なくなるといいなあ!


なかなか雪が積もらなかった今年の北海道ですが、
12月も末が近くなればすっかり一面冬景色です。
雪かきあるし寒いしで大変だけど、
ようやくきちんと冬らしくなってホッとする気持ちもあり。


そんな雪いっぱいの牧場内を楽しそうに徘徊する小鹿みたいな牛さんがひとり。


雪が積もってくると、仔牛ちゃんのハッチの床が高くなってくるので、
少し大きい仔牛ちゃんは飛び越えて簡単に脱出してしまうようになります…。
この方はまだ生まれて2週間くらいのオチビなので↓
まだまだ逃亡は無理そうですね!


発見してしまったので捕獲に向かいます!


む、無理でした…


生後3か月の牛ちゃん、走るのめっちゃ早いよ!!


牧場の毎日、毎年は、いつも同じように繰り返されています。
毎日毎日、
牛たちにごはんをあげて、
牛舎のお掃除をして、
搾乳をして。




でも、同じだけど、いつも違います。
生まれる仔牛も、
牛たちそれぞれが成長したり年を重ねていくことも、
脱走癖のある牛もそのときどきで違うしね…!


それから牧場で暮らす牛たちも、日々、週毎、変わっていきます。


ところで2017年から、
井上牧場の牛さんをモチーフにカレンダーを作っています。
2019年版もできています^^


牧場の三女兼、井上牧場応援企業Casochiのダイヒョーあみちゃんが、
実際の牛さん写真から描いているもの。


※制作はCasochi。minneにて購入できます~^^
もしくはご連絡いただければ郵送もします♪牧場で直接購入も可能です~!

【2019】井上牧場の牛さんの彩りカレンダー


このカレンダーに登場させる牛さん、
いつも誰にしようか迷うのですが、
今年は全員、いなくなってしまった牛さんを選ぶことにしました。


1月は、お肉になった1514ばんだったり。



2月には、キレイで温厚だったから牧場作業員のひいき、1360ばんが。



と、一緒に、
こちらも今年いなくなってしまった1308ばんがいたり。


夏に調子を崩してしまった1025ばんも、
残念ながらいなくなってしまった。
彼女は2009年生まれの8歳で、かなり頑張ってくれたお母さん牛。


そうそう、井上牧場で一番のおばあちゃん牛だった986ばんも、
ついに引退してもらうことになったんでした。
2008年10月生まれの、もうあと1か月でちょうど10歳になる頃に、
と畜場へ送りました。


よく、
生まれ育った牧場で命を終えるのと、
歩けるうちにトラックに乗って知らない場所にいき、
お肉として命を終えるのと、
どっちがよいのだろうか、と思うのですが、
「家畜」として生まれ、仔牛やお乳を頂き続けた彼女たちの、
最後も、できるだけ美味しいお肉として頂くことは、
家畜として飼育してきた私たちにとって責任だったり、
最高の感謝の気持ちなのかもしれないなあと思います。


これだけ長く働いてくれた牛さんだから、
最後くらい気持ちよく生きて暮らしてもらう、っていうのも、
愛情であり感謝だとも思うのですけれどね。


これは986ばんのバラ肉。
最おばあちゃんだったので、食べてみようってお願いしてました。
いわゆる「廃用牛」のお肉だけれど、美味しかった!


12月の1594ばんは、
カレンダーを作ったときには、まだ牧場で暮らしていましたが、
やっぱり12月にと畜場にいきました。
いまはお肉になって、牧場に戻ってきています。



カレンダーにのせきれなかった牛さんもいます。
カレンダーを作り終えてから、サヨナラした牛さんも。
彼女↓は足が痛くて、療養していたのだけれど、
やっぱり回復の見込みが立たなくて、お別れしました。


今月の頭には、
"出来”が悪くてカワイかった初産の牛さんが、
思わぬ事故で亡くなってしまう、なんてこともありました。

彼女の4桁の番号は「1524ばん」で、
2015年10月生まれの3歳。
ちょうど3年後、今年の10月に初めてのお産をした子です。


彼女は成長が遅いのか、
もともとそういう体質なのか、
ほかの牛たちに比べてとても小さな牛さんで、
なんだか毛ヅヤも悪くて、健康といえる牛さんではありませんでした。


体も小さくて気弱なので、
他の牛たちからよくいじめられていたようです。


↓なのでいつもごはんを食べるときはひとりで…!
弱い子はどうしても特別扱いになってしまいます^^;


乳牛の牛さんは、
1歳頃から発情がくるので、
人工授精をして、
2歳頃~に初産を迎えることが多いです。


これは先日の分娩房の様子↓、
1524番より2か月前に生まれた連番の3にん組です。
みんなちょうど1年ほど前に初産をしていて、
同じ時期に分娩の時期を迎えたようで、
同期で仲良さそうに分娩房で過ごしていました^^


一方、1524ばんにはなかなか大きくならなくて、
発情もなかなかこなかった様子。
同期の3にん組はもう、人工授精をはじめて種も付き始めた頃、
1524ばんは育成牛舎の一番小さい牛たちのブースにいたのでした。
(10か月後に生まれた1600ばん代の牛さんたちと同じ場所。。)


だけどさまざまな治療の甲斐あって、
1524ばんもお母さん牛になりました!
(この「治療」は要するに、人間でいう不妊治療にあたると思います。
なんとかして出産してもらおう、という治療です。
乳牛たちの一生には、女性として感じる部分が本当に多いのよね~。)



↑放牧までの間、居場所がないので分娩房で過ごす全然分娩前じゃない4月の1524ばん。
もう生後2年半なのに、隣のベテランお母さん牛よりとてもとても小さい…!


↓無事に種がついたので、出産が近くなるまで放牧場で過ごしてもらうことができました!
やっぱりお友だちは少ないみたいだったけれど、
広い放牧場では牛舎で過ごすより体当たりでいじめられることも少ないので、
のびのび過ごせたんじゃないかしら。



出産の予定が近付いた9月、
他の牛たちより一足早く放牧場から戻ってきました、
これは出産前日の1524ばん。↓


体も小さいし、
お腹もあんまり大きく見えないけれど、
ちゃんと赤ちゃんはいたようです^^


小さな体の彼女は、
無事に、ちっちゃなちっちゃな白いオス牛くんを出産しました^^


比較対象が大男だからとても伝わりにくくすみません、
本当に小さい仔牛ちゃん。
ちょっと大きめのワンコくらいの仔牛です。


ちっちゃいけれど、元気いっぱい!
どれくらい大きく育ってくれるか楽しみです^^


出産したお母さん牛には搾乳のオシゴトがありますので、
1524ばんもベテランのおばさん牛たちがたくさんいる搾乳牛舎へ移動。
毎朝、毎晩の搾乳も始まりました。


他の牛たちとできるだけ距離をとって、
特別扱いされてきた1524ばんですが、
搾乳がはじまるとそうはいきません。


強くて大きい他のお母さん牛たちと共同生活をすることになります。
「搾乳」してお乳を提供することこそが、
乳牛として生まれた彼女の役割だからです。


ちなみに彼女の搾乳量は1日4ℓ未満という驚異の少なさでした…!
自分の仔牛ちゃんくらいは育てることができる量だったかもしれません^^;



↑搾乳牛舎へきて2週間後くらい、なんとか食事をしている1524ばん。
みんなが食べている時間は、餌場に入ることができなくて、
後ろで待っていることが多かったと思います。
体小さいから、ごはんが遠そうだねえ…。


とりあえずちゃんと合間をみてごはんを食べに来ていて安心しました^^


そんな1524ばんは、
12月のある日、朝に餌場で倒れて死んでしまっていました。


きちんとした原因はわかりませんが、
ごはんを食べている間に、他の牛に押されて餌場に落ちてしまったことが考えられます。
打ちどころが悪かったかもしれないし、
体も弱っていたかもしれないし。


昨日まで生きていた命が、
急に消えてしまうことがごく普通に起こります。


そもそもこれが自然界だったら、
体の弱い1524ばんの命はもっと短かったかもしれないね。
だけどここは自然界じゃなくて、人間界。
彼女の命は、牛たちの意志や自由な行動からではなく、
人間たちから生み出されたもの。



3ねんの期間、彼女に場所と餌を用意して飼育して、
そこには経営上の"コスト”が生じています。
その結果、彼女は、
1頭の小さなオス牛を出産して、
1日4ℓの牛乳を50日間生産しました。
この成績は、一般的にみるととてもとても、悪い数値。
だけど、ゼロじゃない。
なんとか頑張って、たくさんのマイナスのなか、
ゼロじゃなくしたのは牧場の努力。
だけど、不慮の事故とはいえ、またゼロになってしまったことにも、牧場側の要因があります。


結果は、数字として大きな大きなマイナスで
もっと早く彼女とお別れしていれば、
赤字を小さくすることはできたこと。
それでも、彼女が少しでも長く生きて、
乳牛としての役割を果たしてくれたことを嬉しく思います。



まだまだ小さい1524ばんの一人息子、
元気に大きくなってくれますように!
(真っ白だった毛色が少しずつ茶色になってきたな~)


と、いうわけで、
今年もたくさんの牛たちとのお別れがありました。
1頭1頭のことは、ごめんなさい、
まだまだ多すぎてすべて覚えておくことはできそうにないけれど、
こうして記録に残せることで、思い出すことができるし、
誰かに伝えることもできます。



こんなにたくさんの命の上に、
私たちの社会、生活、命があることを、
感じてもらえると嬉しいです!



牧場さんの考え方、経営方針はさまざまです。
ここはみんなで生きていくやさしい人間界、
いつか命を落とす人間たちのための動物たちにとっても、
少しでもやさしい環境であってくれることを、
個人的に、井上牧場に期待しています^^



来年はもっと、悲しいお別れが少なくなりますように!!