2018年1月17日水曜日

牛さんたちの食糧事情~


1月14日、この日はとってもお天気がよく。


寒い、しばれる北海道の冬はホントに美しい~。


夏の間はあんなに一面が緑だった放牧場、今は見事に真っ白です。


こんなに真っ白の畑では、
そのまま草を食べることも、
草を収穫することもできません。


そのため、北海道のような雪の降る地域では、
冬に牛さんが食べるための牧草を雪のない間に収穫して、
保存しておかなくてはなりません。


そうして作られたのが、あの牧草ロールです。


↑ところどころ黒いテープが貼ってあるのは
破れてしまったロールラップを補正しているためです…!


牛さんはもともと草食動物なので、
もちろんこの″牧草”が主食になります。


このほか一般的に、
乳牛ではより多くのお乳をだすため、
肉牛ではより体を大きくするために、
栄養価の高い飼料、
つまりは″穀物飼料”や″濃厚飼料”と言われるものを与えています。


井上牧場ではブラウンスイス、もしくはガンジーから生まれた雄牛くんを、
そのまま井上牧場で飼育して″サンクスビーフ”として販売していますが、
この雄牛くんたちは草のみを食べているので
彼らのお肉はグラスフェッドビーフとして販売することができるものです。


※実は昨年2017年生まれの雄牛くんのうち井上牧場で暮らす2頭は、
ブラウンスイス×黒毛和牛の牛だったりしますが…。
↓1691 ばんと


↓1677ばん。


この時期ちょうどブラウンスイスの雄牛くんがなかなか生まれなかったこともあり、
お試しで黒毛和牛交雑種を飼育することとなっています^^;
2頭とも体や顔をゴシゴシしてもらうのが好きでとてもかわいい~。。



肥育をかけず放牧しながら牧草を食べて育つブラウンスイス×黒毛和牛、
どんなお肉になるのか楽しみですね!




そしてここ最近、
牛たちの飼育方法として″グラスフェッド”が注目を集めているようで、
おかげさまで井上牧場にもお問い合わせ頂くことが多くなりました。
日本国内産のグラスフェッドビーフ、放牧牛はまだまだ少ないようですね~。



その一方、
「″グラスフェッドミルク”や″グラスフェッドバター”はありませんか?」
とご連絡頂くこともしばしばあります。




井上牧場では、
搾乳中のお母さん牛たちには自家収穫しました牧草をメインに、
自家収穫のデントコーンサイレージ、
それから地元の食品加工施設から頂くいもやカボチャ、とうもろこしのかす、
一般的な配合飼料も与えていますができるだけ少なく済むように考慮しているようです。
それから″バイオ”と呼んでいる、微生物や菌を含んだ混合飼料も混ぜています。



なので、
井上牧場で生産している牛乳(生乳)はいまのところ″グラスフェッドミルク”とは
言えません^^;


いずれはグラスフェッドミルクを頂けるよう、
一部のお母さん牛たちを放牧、牧草で飼育することも検討しているようですが、
牛たちの体質やそのときの状況にもよるし、
そもそも牛たちは穀類が好きなので、
全く食べさせないのも結構かわいそうだったりするんですよ…!


現在の乳牛たち、特に白黒の牛ホルスタインは、
お乳がたくさん出るように改良されている種類。
急に草食だけを与えるヘルシーな食事に変えると、
それでもどんどんお乳を出してしまい、
本人(…牛)が栄養不足になってしまうこともあるそうです。


牛飼いたちにとって、
牛たちに与える飼料や飼育環境を変えるのはなかなか勇気のいることなんですね~。


それから、
飼料の安全性や経営上のコスト面を考えると、
「自家収穫した飼料」が重要になります。



北海道の冬は長く、
雪が降っている間から草が伸びるまで、
1年の内の半年ほどは牧草の収穫はできません。
デントコーン(牛の飼料用とうもろこしのことです!)の収穫も1年に一度。



自分のところで飼料をまかなうには、
さまざまな計算、計画が必要となります。




何頭のお母さん牛が出産して、
何頭の女の子牛が増えて
何頭のお母さん牛が引退して、
何頭の男の子牛が増えて、
何頭の男の子牛がお肉になって、
その年何頭の牛たちが牧場で過ごすことになるか。



今年使える畑が何haあって、
その内放牧場は何ha、
収穫用の牧草畑は何ha、
デントコーンは何ha…
牧草は何回刈り取ればいいのか…。



そんなことを考えながら、
計画をたてなくちゃいけません。


そうしてせっかく備蓄した飼料を、
あますことなく食べてもらうのもまた難しい様子。



こんなふうに、こんもりと牧草が配られていても、
どうも食がすすんでいないことがあります。



餌場の前でうろうろしているのに、
こちらを見つめるだけであまり牧草を食べていないようです。



ラップロールされた牧草の1つ1つは、
どれも同じものではありません。
畑の場所もさまざまだから草の種類も違ったり、
収穫した時期も違ったり。
そのときのお天気も違ったり。
その牧草ロールによっては
牛たちにとって美味しいものだったり、美味しくないものだったり。
栄養価の高いものだったり、低いものだったりするようです。



北海道では1年に2~3回、
同じ畑で牧草を収穫することができます。
その年最初に収穫したものは「1番草」、
それからまた伸びて収穫すると「2番草」、「3番草」
なんて呼んだりします。



この牧草ロールの作り方は
過去の記事で紹介しています^^



2016年6月25日 牧草ロール(ラップしたやつ)の作り方!
http://inouemilkfarm.blogspot.jp/2016/06/blog-post_25.html









そしてなかでも1番草が栄養価が高く、おいしいと言われています。
(かといって2番、3番は絶対おいしくない、というわけでもないようですが!)



牧場に暮らす牛さんたちには、
さまざまなステージ、サイクルがあって、
それによってあげる牧草ロールを変えたりします。



お乳をだすために充分な栄養を確保できるよう、
搾乳中のお母さん牛には1番草で″できの良い”ロールをあげて、
出産したことがない若い女の子牛や、オス牛くんたちに主に2番草をあげたりするそうです。



牛さんたちは結構味がわかるので、
おいしい飼料はよく食べるし、
気に入らないとあまり食べずに残したりします。
もちろん古くなった草もあまりよく食べません。


そんなときは、
なかなか食が進まない古くなった牧草を回収して、
新しい牧草ロールに入れ替えます。



古くなって食べてもらえなくなった牧草は、
牛たちのベッドに使う敷きワラとして再利用します。



オス牛くんたちの牧草を入れ替えてあげると、
それまで餌場に並んでいなかった牛くんたちも集まってきて
みんなで食べ始めました~。
よかったよかった^^



美味しくて栄養がある食事をとって、
ストレスなく過ごすことが牛さんたちの健康につながります。
牧場では計画的な飼料の分配と、
上手な飼料作りへの努力が欠かせませんね~。



毎日毎日同じことの繰り返しに見える牧場作業ですが、
実は1年先、10年先を考えて、
牛たち、お天気と向き合いながら
その日の作業を判断していくようです。



ところで、
井上牧場のような放し飼い牛舎(フリーストール牛舎と言います!)だと、
お母さん牛、女の子牛たちはよく食べ争いをします。
新入りの牛さんや、体格が小さくて弱い牛さんに、
頭をぶんぶん振り回したり、
頭突きしたりして追い出します。


餌場でポジションをとれずに後方をうろうろする子がちらほら。。
こういった「食い負け」は、
フリーストール牛舎のデメリットの1つと言われているんです~。



一方、オス牛(去勢済!)くんたちはとても穏やかで、
食べ争いしているところは見かけません~。



オス牛くんブースの牛くんたちは生まれ月もばらばらで、
体格もぜんぜん違うのに、みーんなすごくやさしい。
不思議なもんですね~。



人間界と同じく、
牛社会でも女性って結構強いのかもしれません…!



そんなわけで今日も彼らは草を食べて過ごしています。
早く春がくるといいね~^^


2018年1月7日日曜日

2018年もどうぞよろしくお願いします~!



ご挨拶がとても遅くなりました、
2018年に入って早くも1週間が経とうとしております。



次女個人的には、
年末年始は大変ありがたいことに夫婦で夫の実家に帰省し、
牧場から離れて過ごしていたところですが、
牛たちが暮らす牧場にはもちろんお正月休みはありません。


元旦にはかわいい新メンバーが誕生したとのこと。
冒頭の写真のかわいいやつが元旦ベイビーです。


毛色が白目、
目の周りが赤いブラウンスイスで、
体が小さく、
とてもかわいい仔牛ちゃんです^^
でも鼻の周りが黒いから「鼻の穴!」って感じの顔ですね、それもまたキュート。


あまりにも小さいので、
気まぐれ牧場見回り犬のコロさんくらいの体重じゃないか、
と代表ヒデさんが言ってました…。

本当かしら笑




そういえば昨年のブログも振り返ってみると、
2017年の元旦も仔牛ちゃんが産まれていました…!


2017/1/10のブログ、「冬の井上牧場(2016年末~2017年明けはこんな感じ!)」の写真です。
https://inouemilkfarm.blogspot.jp/2017/01/20162017.html



元旦の朝から仔牛が産まれることも、
そう珍しいことではないようです^^;



ちょうど1年前に生まれたこの仔牛ちゃんはいま、
育成牛ちゃん牛舎の高学年(…?)ブースで暮らしています。
順調に大きくなっていますね~
来年にはお母さん牛デビューするんだろうな~^^


↓写真のなか左側に写っている1621ばんの子がそうです。


ブラウンスイスちゃんは大きくなってくるとどんどん茶色が強くなってくるんですよ~


元旦からイソガシイけどおめでたい出来事でした~。
成長が楽しみです^^


そしてここ数日、
井上牧場近辺に遊びにきているなんだかおめでたい動物。


※この日訪れていたのはお隣さんお家のアンテナの上。。

オオワシ です!!




初夢でおめでたいといえば、
一富士二鷹… ですよね。
いやいや、じゃあおめでたいのって鷹じゃん、
鷲(ワシ)じゃないじゃん、、
というわけでもなく、
鷲も鷹も同じタカ目タカ科。
鷲もなかなかおめでたい動物ということで知られているんですよ~。


そもそもこんな野鳥を間近に見られる環境も
なかなかステキだと思います。


この日は日中しばらくこの場所にとまっていました~。
お隣さんのお家の真下まで近づいて写真を撮っても、
全く逃げる素振りナシ。



黄色の口や足の黄色が鮮やかで、
ほとんど動かないし、
本物なのに作り物みたい…。
合成写真みたい…。


オオワシのほか、
オジロワシが遊びにきてくれることもあります。
この季節はよく井上牧場のあたりにも飛んでくるそうです~。
鷲、カッコイイ~。
もっといいカメラと腕があればカッコイイ写真が撮れるのに無念です…。



またきてくれるといいな~^^

そうそう、牧場の仕事には休みの日はありません。
多くの人から、
「牧場の仕事は大変でしょう」
と、言って頂くことが多いです。



でもたぶん、たいてい、どの仕事も大変ですよね~。
私自身は毎日牛さんのお世話をする生活はできませんが、
(だって大変だから…笑
なのでいつも牧場を見に行ってるだけ…
写真をとって適当なことを書いているだけ…笑)
「お仕事、職業の辛い度ランキング」があるとして、
牧場、牛飼いという仕事がそのぶっちぎり最下位かといえば、
必ずしもそうではないと思います。



何ができる、何が大変かは人それぞれですから、
そもそもそんなランキングが存在するという仮定自体変ですけどね。



しかし牧場の仕事、暮らしって、
世間一般の多くの人からは見えなさすぎて、
ただただ辛くて大変そうだ、
というイメージがあるかもしれません。


乳牛の牧場のお仕事の基本は、
″できるだけ”質がよく美味しいお乳を″できるだけ”たくさん頂くことかな~と思います。
(この″できるだけ”というのはとても重要なことです。)


そのため牛たちが快適に、健康に、幸せに過ごせる環境を用意して、維持すること。




それはつまり、牛たちの暮らし、生活を支えてあげることです。


↑飼料チェンジのため古い牧草をお掃除中。
食べ物が何もなくなってしまい不満そうなお母さん牛たちの様子…ふふふ



充分に栄養が摂れる食事、水を用意する。
お部屋は充分なスペースが確保されていて、掃除が行き届いている。
走ったりお散歩したりできる広い場所がある。
体調を崩したときに、対処してもらえる。
食事や搾乳の時間はいつも決まっていて、規則正しい毎日を送れる。



そうそう、
お休みがなくて体も頭も使う大変な牧場の仕事は、
「家庭」にとても似ていると思うんです。


↑新しい牧草ロールがきました~よかったね!


お家のことをするのにお休みはないし、
机に向かっているだけじゃすすみません。
なぜならそれは「生活」だから。
自分たちが生きていることそのものだから。
お休みなんて概念はありません。



家庭では、
例えばお母さんが毎日ご飯を作ったり、
掃除をしたり洗濯したり、
買い物したり家計を管理したりするでしょう。
家族の皆でその役割を分担しているかもしれませんね。
交代制にして、皆それぞれ「お休み」をつくっている家庭もあるかもしれません。


牧場の仕事はまさに、
牛たちの生活を支えること。
「お母さん」的な仕事です。



お母さんの仕事はそりゃあ大変でしょう。
でも、
決してできない仕事でもないし、
珍しい仕事でもありません。
家族の生活、人生を思えば、自然に真剣になれるでしょう。
もちろん一息ついてお茶したり、お昼寝することもある。



平日と週末の区切りはなく、
年間休日120日なんて程遠く、
仕事とプライベートを分けるなんて感覚はありませんが、
それこそが牧場の暮らしのよいところ。
牧場での暮らしは、
仕事というよりライフスタイルだなあと思います。


どのお仕事も、誰かにとって必要だから存在しています。
だけど、お金だけのために、
なんとなく選んで従事していると、
その意味や目的を見つけられなくて、
いまいち毎日楽しくなくなってしまうような気がします。



私自身も期間はいろいろですが結構いろいろなお仕事をしたことがありますが、
どの仕事においてもなんだかもやもやするところがありました。
仕事はもちろん生活のため、収入のためであり、
仕事の中で出会った人たちと関係性ができていくのも楽しくて心地よかったけれど、
仕事自体の意味や目的、
その仕事を自分が行う理由を見つけられなかったことは、
私にとっては結構しんどいものでした。


例えば牧場での暮らしのように、
″仕事”と″暮らし”の壁がない毎日の中では、
その意味と目的を見出すのはすごく単純で楽ちんです。
もちろん一つ一つの作業は辛くて面倒でも、
必要性はゆるぎません。
頑張っても、さぼっても、休んでも、
全ては自分と家族にかえってくることだと、
強く実感できるからです。
とってもシンプルで納得がいきやすい生活だな~と感じます。



そんな牧場の生活を観察、発信するという今の私のライフスタイルも、
私にとってはかなりシンプルで納得のいくものです。


↑もちろん悪天候での牧場作業はとても辛いですけれど…!辛い日も過ごしやすい日も、自然の恵みです!



どんなお仕事も、
大変か大変じゃないかは自分次第。
他の人の辛そうな仕事や辛そうな環境と比較して自分をなぐさめるのはちょっと切ない。



誰かとの比較じゃなく、
あくまで自分のなかで、
自信をもって楽しく暮らせる生き方に出会えたらきっと幸せなことでしょう~。




他の仕事、暮らしと同じように、
牧場の仕事、暮らしもごくごく普通のもの。
必ずしも辛く大変なことばかりではなくて、
誰かにとってはぴったりの、幸せな生き方になりえます。



というわけで2018年も、
多くの人にとってまだまだ未知の、
牧場というライフスタイルをゆるっと発信していきたいと思います~!
本年も宜しくお願い致します!