先日、井上牧場には見慣れない、大きな赤い機械が2台。
そしてその機械の中に、
井上牧場の牛さんたちが1頭ずつ、順番に入っていくという不思議な光景が。。。
この日は、「削蹄」の日。
この赤い機械は削蹄のための機械です。
削蹄、というのは、牛の蹄を切ったり形を整えたりすること。
蹄はつまりは「爪」ですから、人と同じく時間が経てば伸びます。
私たちが爪を切るのと同じく、牛の蹄も定期的にお手入れしてあげなくちゃいけません。
そして、牛飼いに関わる職業・業種として、牛の蹄のお手入れを専門にする「削蹄士」というお仕事があります。
削蹄をお願いするのは倉本削蹄所さんです。
代表の倉本さんとはもう、10年以上のお付き合いだそう。
ちなみに倉本削蹄所さんは現在、人手不足にお悩みとのこと^^;
削蹄の仕事に興味ある方おられましたらぜひ連絡ほしいとのことでした!
というわけで、こんな珍しい機会ですから、当日の様子を写真でお伝えするとともに、
私なりに「牛の蹄」、「削蹄」について調べてみたこと、思ったことを書いていくことにします!
削蹄士さんたちが、牛の蹄をカットしたりやすりをかけたりして、キレイに整えていく様子は、ネイルケアそのもの。
でも、私たち(主に女性)が指先を美しく保つために行う美容目的のネイルケアと牛たちの削蹄は、かなり意味合いが違いそう。
私たちにとっては、ちょっと爪が伸びてしまってもそこまで重大な問題はないですが(たぶん…)、牛にとっての蹄のお手入れは、健康維持のために重要な意味があるようです。
牛は、何百キロもある大きな体を4本の足で支えていますね。
そもそも牛の体が大きいのは、牛が草食動物であることに由来するようです。
牛の本来の主食である草は食物繊維が多く消化されにくく、栄養も少ないのでたくさん食べなくてはいけません。
だから、胃が4つに分かれていたり、腸がとても長かったりすることで、多くの食事からゆっくり栄養を吸収します。
つまり、「消化器官が大きいから、体も大きい」ということのようですよ~。
しかし、ガッチリと硬い背骨では素早く動けません。
猫やチーターなど、肉食動物は背骨が柔らかく、しなやかに動くことで速く走ることができます。
というわけで、牛のような草食動物たちは「つま先立ち」をすることで歩幅を大きくし、背骨がまっすぐでも素早く動くことができるということ。
そして実際には「つま先」というより、「指先」で立っています。
要するに、バレリーナのような指先の使い方です。
となると、ずーっと指先で立ったり走ったりするのは大変です。
指への負担が大きすぎますね。
バレリーナさんだってつま先のところがカッチカチになっているトウシューズを履いているじゃないですか。
というわけで、指先にある爪の部分が発達して蹄となり、指を守ってくれているのです。
蹄は爪であり、トウシューズだ、というわけですね!
蹄があるおかげで、牛は大きな体重支えて立って、歩いて、走ることができます。
現在のように人に管理されている牛たちは、運動量が少ないので蹄が伸びる一方です。
蹄の先端が長すぎたり、裏側が伸びて盛り上がった蹄は、
蹄の付け根に余計な負担かかったり、
立ったり歩いたりする際にバランスが取りにくくなります。
2つある蹄がぶつかりあって不快だったり痛みが生じるかもしれません。
また、蹄には血の巡りをよくするポンプの役割があるそうで。
バランスが悪く体に負担のかかる立ち方、歩き方によってポンプの働きができなくなり、血流が悪くなるそうです。
こっちは削蹄してもらう前の前足です。↓
削蹄が終わって機械から出てきた足がコッチ。↓
削蹄前とは違って、スッキリしています。
たしかにキレイに体重がのりそう!
(ビフォーとアフター、違う牛さんでスミマセン…)
ちなみにこちら↓は、放牧していたオス牛くんの足元。
特に削蹄なんかはしていませんが、牛舎にいる女の子牛さんたちよりもコンパクトでキレイ。
土、草の上で過ごしていると、自然に整えられているようです。
そして男の子の足はそもそも太くて大きい…。
私たちも、足首や膝が痛ければ、それをかばうように動きます。
そうすると、最初痛かった足や膝ではなく、腰や肩が痛くなることがあるように、
結局別の部位にも余計な負担がかかってしまいます。
結局別の部位にも余計な負担がかかってしまいます。
現代人にとって、姿勢の悪さや運動不足、血流の低下が健康に影響するという説はよく耳にしますよね。
牛にとってもまったく同じことが言えるんだろうなあ~。
というわけで、牛たちの健康を維持するために重要な働きをして
いる蹄をケアするのが「削蹄」。
削蹄のプロである削蹄士さんは、蹄を切ったり、削ったりして、牛が快適に立ったり座ったり、歩行したりできるように整えてくれます。
蹄の整え方も、牛によって、牛の種類によって、飼育環境にさまざまの様子。まさに職人技ですね~!
こんなのとか、↓
こんなのとか、↓
さまざまな道具を使い分けて、手早く4本の足の蹄をケアしてくれます。
削蹄は、削蹄する人が直接牛の足を持ち上げながら行うのが一般的だったので(今も…?)、
パワーも必要ですし、蹴られたり踏まれたりなどケガの危険もある大変な仕事。
こういった大きな機械、設備を使うことで、削蹄をより安全で素早く進められるようです。
とはいっても、牧場さんの環境や牛それぞれで異なる蹄を、その牛に合うように整えていくのはプロの技。
今まさに削蹄中の牛さんです、↓
キレイにしてもらえて心なし嬉しそう!(…たぶん…)
また、削蹄をすることで蹄周りの健康状態もチェックしてくれます。
何か症状があれば処置をしたり、牧場主に注意を促してくれたりもします。
この日も、削蹄してもらった牛たちの半分近くが何かしら蹄にトラブルを抱えているようでした。
包帯を巻いているのが、治療してもらった牛さんのようです。
井上牧場では、年に3回削蹄をお願いしています。
この頻度は、牛の飼育方法や牧場さんの方針によっても異なるようです。
この頻度は、牛の飼育方法や牧場さんの方針によっても異なるようです。
また、牛飼いさんが自ら削蹄をするところもあるようです。
蹄を伸びたままにすることで、牛が立てなくなったり、病気になったりすれば牧場においておくことはできません。
牛の寿命を短くしてしまうことは、牛に対しても申し訳ないことであり、
牛飼いの生活を続ける、牧場経営という視点でも損失でしかありません。
きちんと蹄のケア、チェックをすることで牛さんたちの健康を守る努力をするのは、必要不可欠なことと言えるでしょう。
井上牧場では、今現在、搾乳中の牛さんたちはフリーストール方式、つまり牛舎内での放し飼いというスタイル。
牛舎内の足場は全てコンクリートで、動ける範囲も制限されているので蹄が痛みやすいそうです。
井上牧場の牛飼いたちも、いつも牛さんたちの足が痛くなってしまうことに頭を抱えています。
また、お掃除は1日に2回していているとはいえ、牛は毎日大量にゴハンを食べ、大量にうんちやおしっこをします。
そのため、どうしても歩く場所が衛生的ではなく、蹄が湿っていることもトラブルが続く原因になっているそう。
さて、牛飼いにとって欠かせない削蹄さん、倉本削蹄所さんは現在人手不足にお悩み中とのこと。
井上牧場のある滝上町と同じオホーツク管内の、「興部町」というところの会社さんです。
北海道で牛に携わるお仕事に興味がある方いらっしゃれば、
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未経験の方、女性の方でも歓迎だそうです!
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