2018年9月11日火曜日

電気がないと牛乳を飲むことができなくなってしまうのかな?




2018年9月6日の未明(という時間帯でいいかしら…。午前3時過ぎ。)、
北海道で大きな地震がありましたね。
“北海道胆振東部地震”という名前になったようです。
震源地付近では大きな被害があり、
その地域で暮らす人々、その環境を思うと言葉になりません。


この大きな地震は、
この大きくて広い大地北海道全域を揺らし、
北海道全域が停電するという事態でした。
ここ、井上牧場のあります滝上町も、
地震後1日~2日ほど停電が続き、
いつもとは“少し”、違う時間を過ごすこととなりましたので、
記録、紹介しておきたいと思います。



さて、冒頭のイラスト4コマはもちろん三女あみちゃんによる作品。
ここ数日の井上牧場の1シーンを切り取ったもので、
主人公のホルスタインちゃんが体調を崩しているものの、
地震や停電による大きな影響なく、
いつもの牧場があったことも伝えています。


※なんとのんびり描かれていますが、
ホルスタイン母ちゃんは出産後から立つことができなくなっており、
もう数日経過しています。
早くよくなってくれるといいなあ。。


↓これが描かれている2頭!!



草を奪い取ってしまうガンジー母ちゃんはお産が近いので野外で過ごしていました、
本日の朝には出産が終わって新しい仔牛ちゃんが登場していました!
昨年も同じ場所で出産したガンジー母ちゃんです^^

↓産まれてきた仔牛ちゃん


↓性別チェックしている牧場作業員。
(どうやら女児らしい^^)



農業、酪農大国北海道なもので、
facebookやニュース等で今回の地震・停電の影響で
多くの酪農家が生乳を廃棄する様子が報道されたそうで、
井上牧場にも牛たちの状態や生乳の行き先を心配頂く声かけをたくさん頂きました。
ありがとうございます!


普段、こういった生産の場から遠い消費者の方が、
いつだってスーパーに並んでいる牛乳やアイスクリームやバターや生クリームが、
どんな風にそこに届いているのか
多くの人が知るきっかけになったのだなあと感じます。


そう、
牛たちを飼育する牧場の現場では、水道の水と電気が欠かせません。
(でもこれは、「現代におけるスタンダードな酪農」という前提。。。)


停電と断水が、酪農家にどう影響するのかをおさらいしてみますね。



まず牛たちはすごくたくさん水を飲むのです。
(乳牛なんてなんせ1日に20~30ℓもお乳を出す牛ちゃんも多いですからね…!)
水道から水が出ないとなると、
牛たちの数だけ遠くから水を運ばなくちゃなりません。


(関係ないけど私は牛たちが水を飲む姿も好き。。
チューチュー上手にのめるウシや、バッシャバッシャ舌ですくいとる下手くそなウシがいるよ…!)


それから搾乳するために電気が必要です、
機械を使ってお母さん牛の数だけお乳を搾ります。
井上牧場ならだいたい毎日60頭、
もっと大規模な牧場なら何百頭になることもあるでしょう。



それから、搾乳した後は、搾り終わった「生乳」が腐敗しないよう、
冷やしながら保管しなくてはなりません。
(※生乳は搾りたてのお乳、これを加熱殺菌すると「牛乳」となります!)

酪農を営む牧場には必ず、クーラーが設置されていて、
搾りたての生乳を冷却・保存します。
ここでも電気、それから水をたくさん使います。


↓ところで井上牧場は先日、故障が原因でクーラーの入れ替えをしました…
(右のクーラーが今のもの)
なんと以前の半分以下のサイズへチェンジしています^^;

(牧場作業員が大きすぎてこの前までのクーラーの大きさが伝わりにくいな…。)



以前からこのでかすぎるクーラーを小さくしたいという思いはあったのですが、
クーラーの故障により大至急入れ替えが必要だったのと、
ビンボー農家なので中古で調達してもらったことにより、
6000ℓサイズから2350ℓサイズへ…なんと以前の半分以下のサイズとなってます…!!


クーラーに保管している生乳は、
「集乳のトラック」により「乳製品加工工場」へ運ばれます。
流通が原因で集乳のトラックが動かないとか、
電気や水が不足して工場が稼働しない場合も、
牧場で保管しているクーラーの中の生乳はすべて廃棄することとなります。



↓これが集乳してくれるタンクローリー車。
我が家では"ローリーさん”と呼んでいます。


(ところで、上記のとおりクーラーの入れ替えにより、
これまでの2日に1回の集乳ではギリギリクーラーに貯めきれないことがあるので、
現在、毎日集乳してもらうという事態です…。
タンクローリーさんありがとうございます…!!)



井上牧場の場合は、
約1日半の間停電が続きましたが、断水はなし。
そして幸いにも発電機の用意があったため搾乳、クーラーで生乳の冷却と保管ができました。
さらに、普段から生乳を納品しているよつ葉工場も自家発電により稼働していたため、
いつもどおり集乳してもらうこともできました。



上記のいずれかが欠けていたら、
搾乳ができずにお乳の張った牛たちが苦しんだり、
体調を崩してしまったかもしれません。
また、生乳を廃棄することとなったでしょう。
実際にこのとおりになった酪農家さんが多くいました。


我が家において少し困ったことといえば、
発電機を回すためにトラクターが常時一台必要だったので、
牧草の収穫が滞ったこと。
それから、春からはじめた牛乳加工は工房の電力に不安があったことと
ヤマト運輸による配送ができなかったのでお休みしました。
それをのぞいては、ほぼ普段どおりの牧場でした、大変ありがたいことです。


それからトラクターを動かす軽油、
こちらも普段から自前のタンクから給油ができるので、
数日間であれば発電機を稼働することができます。
この残量が少なかったり、補給できず長期間過ごすことになったらまた大変なことになってしまいます。。


ところで、今回の停電により
多くの方が「電気がないと大変だ」って感じたと思います。
北海道より遠く離れて過ごす人たちも、
被災の様子に心を痛めて、
「電気がないと牛乳もアイスもケーキもヨーグルトもチーズも食べられないんだ」
と感じたと思います。


北海道電力の体制や、発電所の数や場所、種類について、
見直しが必要だと考える人もいるでしょう。


でも私が感じているのはちょっと違って、
「どれだけ普段たくさんの人がたくさん電気に依存して暮らしているんだろう」
ということのほうです。


本当にそんなに毎日ずーーっとたくさん電気が必要なのかな。
365日24時間、国が用意してくれるライフラインに頼りきっている暮らしって、私は不安だわ。
そんなことを改めて考える停電の時間でした。


牧場に関していえば、
電気がないと困った状況になるのは、
「たくさんの牛」を飼育していて、
「たくさんの生乳」を生産して、
「遠く離れた工場」で加工しているからです。



もし、
搾乳するべき牛たちが10頭くらいだったら、
家族何人かで手分けしてお乳を搾ってあげられたかもしれない。
とれた牛乳はせいぜい1日200ℓくらいで、
近くの人たちと分けたりして消費したかもしれない。
自家製の野菜と一緒に煮込んでシチューにして食べたかもしれないし。


だけど、
どうしてだか昔のように小頭数の牛を飼う農家はほとんどいなくなってしまいました。
同じ場所にたくさんの牛を集めて、
たくさん機械を使って、
たくさんの牛乳を効率よく生産することで、
「安くてたくさんの牛乳を流通させたい、そうしてほしい」と世間が考えたからだと思います。


電気がないと牛乳を頂くことができないのは、
今、そういう社会の仕組みの中で生きているから。



ちなみに井上牧場のような農村での暮らしは、
数日間の停電くらいでは生活がパニックになることは少ないと思います。
野菜や卵、牛乳、お肉を生産している農家さんが近くにいて、
自家菜園で野菜をつくっている人も多いし、
スーパーやコンビニが歩いていけない距離だから、
なんとなく食材は家にたくさん確保していたりする。
特に北海道には極寒の冬があって、
大雪や吹雪で家を出れない日があることも背景かもしれない。
ちなみに井上さんちの場合は冬になると薪ストーブを使っていて、
ひと冬を充分に越せる量の薪を蓄えているから、寒くてもどうにかなる。


みんながこんな暮らしをしていなくても、
近くの場所でこんな暮らしをしている人と友達になっていたら、
そこに避難することもできるかもしれない。


それからちなみに、
この地域では数十分~数時間の停電が起こることってわりとしょっちゅうある…。
今年に入ってから2~3回はあったような気がします。
(それもどうかと思う人もいるかもしれないけど…)
(住人はもう慣れているから大丈夫…)
(さすがに今回の停電は1日以上と長かったので困ったと思うけど…)



だから私次女はこのたびの停電の間も、
たいして不安になることなく、
のんびり穏やかに過ごすことができました。
実は私、
できるだけどんなときも心配なく過ごせる環境で暮らしたくて、
北海道の実家である滝上町の井上牧場に戻ることを選択しまして、今の生活があります。



↓毎年たくさんのお野菜を育ててくれるばあちゃんにとても感謝…!
そろそろ自分でも自家菜園覚えなくては…



今回を機に、
災害への備えを見直して、
日常のありがたみを感じた人が多いことでしょう。
災害はいつどこで起こるかわからないものです、
電気やガスや水道がいつでも整っている状態を願い、要求し続けるより、
災害時にどうしようもなくなってしまう現状のライフスタイルを見つめなおす機会になってくれたらと思います^^



何はともあれ、
停電の夜の星空は本当にキレイでした。。。
同じ星空が、大都市札幌の真ん中でも見られたのだと思うとなんだか不思議です。
本当に宇宙は広いなあ~。
ちなみに写真は撮ってません…!
肉眼で見る方が絶対にキレイだからね…!!



↓以下は停電の日の夜の自宅内と炭焼きピザ。
どんな状況でも楽しく過ごすワザと心持ちはすごく大事。





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