2017年6月30日金曜日

牛たちの痛くて最悪な1日の1つ…「角切り」の日です!

 
6月も最終日。
スッキリ晴れとはいきませんでしたが、
気温が高くて暑い1日でした~。
風が吹いていたのが救い!
 
 
牛さんたちはどうだったかな?
暑さでバテてないかしら。

 


うん、大丈夫そうですね!


それからこのあたりでも
やっと畑で収穫できるものもできてきまして、
ニラ、レタス、小松菜などなど
ばあちゃんが栽培している野菜が食べられるようになってます。
イチゴが美味しい~!

 
 
 
 
それからそれから、
その辺の野草のお花でブーケにするのが
最近のお気に入りです~。
 
 
 
↓コチラの作品は気づけば
「オレたちの好きな草詰め合わせ」状態。
 
 
 
 
牛さんたちは
クローバー系の草がお気に入りなので~。
(個々の好みもありそうですけれど!)
 
 
 
 
 
同じ地区でも場所によって道路ぎわのワイルドフラワーたちもさまざま。
「北海道はどこ走っても同じ景色」
と言われることがありますが、
よくよく見てみるといろんな発見ができるのでぜひ~^^
野草たちも結構カワイイのです。
 

 

  
さてさて、本日は
書こう書こうと思って溜めていたテーマをようやく…。
 
 
 
このブログではときどき「角」についても触れているのですが、
井上牧場にはちょくちょく、
ちょっと角の生えている牛さんがおります。
 
 
 
 
先頭のこいつも↓
 
 
こいつも↓




こいつなんて結構はえちゃってます。↓




そして、
こんな微妙な角の生えた牛たちを見た方から、
「この牛さんはオスですか?」
「ホルスタインって角生えるんですね~!」
と言われることがあります。

 
 
いえいえ、
角が生えているのはオス牛くんたちだけではありません。
メス牛さんたちにも生えます。
↑いま紹介した写真の例の下2枚は
どちらもお母さん牛。
 
 
 
 
でも、多くの人たちは牛乳をくれる乳牛には角がないと思っています。
映像や写真で見るホルスタインには角が生えていないから当然です。
 
 
 
じゃあなぜ角がないのかというと、
小さい頃に「除角」しているからです。

除角、つまりは「角切り」。


さっきのちょこっとだけ生えている角は、
「除角したけどちょっと伸びちゃって生えちゃった角」なのです。


そしてこの角切り、
決して楽な作業じゃありません…。

では、グロッキーな感じにならないよう、
角切りのことをお伝えしてみようと思います!



6月中の先日、ちょうど角切りの日がありました。
ターゲットはこいつらです。


 


 このときはまだ、
この後起こる不幸な出来事を予想すらしていませんね…。
いつも通りののんびりムードです。




除角の方法は色々あるようですが、
井上牧場ではだいたい半年…くらいかな?
まだ牛さんが小さくて、
角が少し伸びてきたくらいの内に行います。

あと、暑くない季節。




 ↓ちょっと角が飛び出しているのがわかりますか~?

 
 このちょっと伸びた角を、
大きい爪切りみたいな器具で切ります。
 
 
 
だけど角は爪とは違って、
神経も血管も通っているし肉も付いているので、
とっても痛いです…。



そしてその後、止血のために焼きごてを当てるのです…。
きちんと止血できるまで、数十秒にわたります。
これがもう、とっても痛い…。


 
※この写真は昨年の角切りの日に撮影したものです!
 
 

あまりの痛さで牛が暴れますから、
予め牛を捕まえて、頭部をロープで固定しています。

 
 
 
いくらまだまだ小さな子どもの牛とはいえ、
100㎏を超えた牛が暴れまわると大変です。
人も危険な作業なのです。
 
 
 
私もこの角切りデー、キライなので今回は遠くから見守ることに…。
(角切作業好きな人なんていないかあ…。)
 
 

 
最近は代表と2年目作業員の2人で除角作業しています。
最初のターゲットが奥の方でやられていますね…。
意外とギャラリー(牛さん)もいます。
 


終わった後はかなりしょんぼりしています。
食欲も落ちたりします。
人間が嫌いになったりもするようです。


徐角後の牛ちゃんの角あたりを舐めてはげます(?)シーンに遭遇。
や、優しい!
でも衛生的には?かもしれません…。
 
 
 
そして角を切られた牛ちゃんはしばらく放心。


そして次の子をお迎えに。
気持ちよく草を食べていましたがこの後最悪なことが起こります…。
 


 
切ったあとの角がコレです。 
1、2、3、4、5、6個…3頭分ですね!
 
 
 
「除角」は、作業自体も大変ですし、
牛たちにとっての負担もとても大きいです。
痛すぎて腰を抜かす子もいるし、
数日間食欲が落ちたり、体調を崩す子もいるそう。
除角中に牛が痛くて暴れてしまうことで、頸椎を痛めるなど命に関わる事故になることもあるそう。
 
 

井上牧場はもちろん、
牛飼いなら皆、できることならやりたくないと思っているでしょう。

 
 
 
角があることで飼育する人が危険なのももちろんですが、
牛同士で争うときに角の大きさで強弱が決まってしまうし、
傷つけあってしまうかもしれません。
また、弱い牛は充分に飼料を食べられなかったりします。
牛たちの安全のためにも必要という考えの元、
井上牧場でも除角を行っています。
 
 
角は生まれ持った「武器」みたいなとこありますから、力関係の平準化につながるようです。
 
 
 
 
麻酔や鎮静剤、
もっと小さな内に薬品で角部分を焼くなど、
牛にとってもっとストレスのない方法もあるようですが、
コスト面や薬品を使うことの安全性などから、
選択されないケースが多いのかなと思ってます。
 
 
 
あるいは、角が生えたままでも人を傷つけないくらいきちんとした信頼関係が持てて、
序列があっても問題なく暮らせるくらい広い規模で飼育できたら、
除角の必要性が減ったりするかもしれないですね。
 
 
 
代表ヒデさんや夫人さとみさんも、
まだまだ頭を悩ませながら「除角」を続けているんだろうな~と推測します。
本来なら持っているはずの角を、人の勝手で取り除いてしまうなんて不自然ですもんね~。
(そもそも畜産、農業なんて不自然なものですが)
 
 
 
いずれにせよ、かわいそうな「除角」は、
大量の牛乳、大量の牛肉を効率よく生産しようという風潮の中で
一般的になったものと思います。
 
 
 

ちなみに、牛さんの中には角の生えない遺伝子を持つ子もいるそうで、
角の生えないお父さん牛の種を選ぶことで
生まれた仔牛には先天的に角が生えなくなるよう。

 
 
 
↑左の子は今回の角切り時期の牛たちと同世代の子ですが、
角がないのでこの痛い経験をせずにすみました~。
仲間たちが除角されていく様子を傍観してました~ラッキイ。
 

「赤ホル」と呼ばれる、
色が茶色いホルスタインで角のないお父さん牛がいるらしく、
最近井上牧場に赤ホルのちびっこが増えているのはこのためだそう。

 
 
 
このことか↓
 
 
 
この子とかね!↓
 
 
生まれつき角が生えないなんて、自然界ではかなり弱者ですが
家畜の世界では「最悪の日」が一日減るラッキーガールです。
 
 
 
ところで、
井上牧場にたくさん暮らしているブラウンスイスちゃんは、
角切りしたあとも機嫌を損ねない子が多いとのこと。
そんな温厚さもブラウンスイスの魅力だそう。
 
 
除角でしょんぼりしていたこの子も、
1週間後には元気に写真を撮らせてくれました~^^




あんなに痛いことがあっても、
牛たちはちゃんと人間と一緒に暮らしてくれます。

とっても優しい動物たちです、ありがたや…。





(そして井上牧場で暮らすオス牛くんたちには角切りともう1つ、
とっても辛くて痛い日が訪れます…。
その話はまた後日…
!)


除角もまた井上牧場で暮らす牛たちの現実です。
(もちろん除角していない牧場さん、牛飼いさんたちもいますよ!)


牛にも自然にもやさしくて安心安全な食事を頂くって、難しいですね~。
牛飼いたちは何十年も悩みながら考えながら牛飼いしています。
どんな食べ物を口にしたいか悩みながら考えながら、
食べ物を選んでもらえたらいいなあと思います^^

2017年6月3日土曜日

今度のサンクスビーフはこんなやつのお肉です!1477の思い出アルバム

 
 


昨日も今日も雨です、明日も雨の予報です。
昨日6月2日に続いて、
井上牧場のある北海道滝上町は、
今日も気温は10℃未満。
 
 

昨日なんて最低気温は2度だったとのこと。
6月だというのに…これじゃ冬ですね!




今週末まで滝上町は「芝ざくらまつり」期間で、
日本一とも言われる芝ざくらを見に多くの観光客さんが来てくださりますが、


これじゃ
「北海道まじで寒い」
「滝上って寒すぎ」
とか言われちゃうな~ははは~。


5~6月だって30℃近くなる暖かい(もはや暑い…)日だって
あるんですよ~
ホントにお天気の読みにくい地域です…。

何着ればいいんだ…。





私たちにとっては寒い日でも、
牛たちは相変わらずの様子。

数日ぶりに放牧場の中におじゃまして
牛さんたちの顔を見てきました~。






今年の放牧メンバーもやっぱり人が好きなようで、
私たちを見つけると遠くからでも走ってきてくれます。

なんというおもてなし(…?)精神。




(おもてなし(…?)しすぎて
後ろからどつかれたりします…)



何はともあれみんな元気そうで何よりです^^




さてさて、本日お伝えしたいのは先日出発したオス牛くんのこと。



「サンクスビーフ」は、
井上牧場生まれのブラウンスイス(たまにガンジー)オス牛くんのお肉。
年に5~6頭分、その一部の部位だけを販売しています。
サンクスビーフの販売をその都度楽しみに頂いている方が

年々増えているようで、
大変ありがたいです^^




当記事の冒頭の写真に写る彼は、
5月15日にサンクスビーフを頂戴するべく、
井上牧場を出発しています。




 
いつもお世話になっている
には、
既に彼のお肉をお届けしておりますので、
お近くの方はぜひご利用ください^^
 
 
 
(個人さま向けの小分け販売は今のところ未定ですが、
部位そのまま丸ごとブロックでよろしければ
ご用意できるところもあるので
ご相談くださいね~!)
 
 
 
※ベガーズハーレムさん&オステリアブラさんの簡単なお店紹介については
当ブログの過去記事でもどうぞ~
 
 
 
 
 
 
 
 
というわけで、
先日ここを出発した彼のことについて
少しお伝えしたいと思います!
 
 
 
もしも次に井上牧場のサンクスビーフを口にすることがあったら、
こいつのお肉である可能性大です。
「こんな牛くんのお肉なのね~」
と少し思い出してもらえたらとてもうれしいです^^
 
 
 
まず彼の外見から。
一番の彼の特長はね、
牛さんなら必ず付いている、
付いていなくてはならないアレが付いていないことです…。
 
 
 
 

生まれた牛さんにはもれなく、
「個体識別番号」が与えられます。
まさに我々で言う“マイナンバー”です。
そしてその個体識別番号を記載した“耳標”を装着しなくちゃいけません。

 
 
 
でもこの方には付いていません…。
いつのまになくしてしまったご様子…。
 


 
井上牧場では生後1~3日の間に耳標を打っているようです。
つまりは赤ちゃんの内に、
両耳にバチンと穴を開けられます。
痛いよねえ、、、
せっかく生まれてきたと思ったら
お母さん牛と離れ離れにさせられるわ
耳にバチバチ穴開けられるわ…
この世の中って散々よねえ…。
 
 
 
(そういえば人間でも国や民族によっては赤ちゃんや子どもの内にピアスをする風習もありますね!)
 
 
 

というわけで今でこそすっきりした耳の彼にも、
仔牛のときは耳標がついていました。
両耳の中心にはピアス(耳標)ホールがばっちり残っています。

 
 

(↑この写真は1年くらい前のもの。既に耳標ないな~。)



耳標は必ず付いてなくちゃダメなので、
出発前に改めて付けられたみたいです。

トラックに乗せられるわ
耳に穴開けられるわで、
またしてもさんざんな気持ちだったかもしれません!

 
 


耳にこそ番号はありませんが、
彼の番号は1388514776


2014年11月生まれ。
生後30か月、ブラウンスイスのオス牛です。

 
 
 
 
 
 

お母さんを調べたところ、
まだ現役で井上牧場で暮らしています!

1181のこの方です~。
 
 

 

1477君とはあんまり似てないかな~。



井上牧場の牛さん、
特にオス牛くんたちは人がとても好き。

この方もそう。


 
鼻をくっつけてニオイを嗅ぎにきたり、
服をべろべろしにきたりと、
かなり近くまで距離を詰めてきます。



「お肉になるべく出発する」
ということは、
基本的にはオス牛くんたちの中での最年長ということになります。
なので、出発予定の牛くんはだいたいリーダー的存在です。
体も大きいしね!

 
 
 
 
これまた私の勝手な想像ですが、
他の牛さん頭突きしたりするのはあんまり見なかったし、
厳しいリーダーではなかったかなーと思います。
他の牛たちにはあんまり興味ない、自由な感じの牛くん。
 
 
 
次世代の1493とか1505、1506あたりが
結構強気でヤンチャに見えるから、
サブリーダーの層が厚かったかも。
1477が抜けた後はリーダー争いとかグループ分裂とかあるかもね…!
 
 
 
超内輪かつ人間目線かつ個人的な解釈で恐縮です笑
メンバーが変わった後の牛群模様も、
私にとってはちょっとした楽しみだったりします。
 

 
 お迎えが来る前の日には、
出発する牛さんを放牧場から牛舎へと戻しておかなくてはなりません。
お迎えのトラックがいつきても、
スムーズに乗り込めるようにしたいから。




一般的には放牧場から1頭の牛を捕獲、誘導するのって
かなり大変な作業です。




ところが彼、1477は
放牧場に現れた代表ヒデさんに自らついていって、
すんなり牛舎まで戻ったそう。




 (1頭だけ別の場所に閉じ込められて1晩過ごすってなったときには、鳴いて怒ってたみたいですが…!)




牛肉の味は、
育った環境、食物、季節によって変わります。
さらには、その牛さんによっても変わります。
 
 
 

愛嬌のある、人なつっこいオス牛くんは
いったいどんなお肉になっているのかしら。




食事の豊かさは、
「おいしさ」だけが基準ではないですよね~。
そのものを知ることで
「おいしく」感じられることも当然あると思います。
だから私が彼らのお肉を口にするとき、
絶対に、100%、おいしいです。
正直、食べる前からおいしいって決まっています。

 

自分の手やよく知っている人の手によって。
それからよく知っている環境で。
育ったり、採ったり、獲ったりした食材を口にすることができる暮らしって、
すごく価値があると思っているのです。

 
 



この文章を書く私次女は、
今のところ牧場作業には関わっていません。
(ほんのたま~に

ちょこ~っとお手伝いになることをすることもありますが…!)



あくまで生産者ではなく消費者に近い視点で、
身内の運営する牧場であるという色眼鏡を当然着用しつつ、
牧場のことや牛たちのことをお伝えしたいな~と思ってます。




そうすることで、
「広い場所で自由に暮らし、
穀物を食べない、
肥育されていない、
赤身いっぱいの健康なグラスフェッドビーフ」



という価値、評価に加えて、


「どんな場所でどんな風に育ったどんな顔した牛さんのものなのかわかるお肉」
にできたらと思っている次第。






「顔を見たら食べられない」
「かわいそう!」
なんて言わないで、
この顔を思い出して、
美味しく食べてもらえることを祈ってます^^